浦島太郎

昔々あるところに毎日群馬県から都内へ出稼ぎに来ているくたびれた中年おじさんがいました.
ある日の朝,いつものようにドトールでコーヒーを飲んで元気をつけてから会社へ向かおうと六義園の前を通りかかると歩道の真中でカメの子供がジタバタ動いていました.
中年おじさんは知らん顔をして通り過ぎようか,六義園の中に放り込んで行ってしまおうかと迷いましたが,このままだと誰かに踏まれてしまうかもしれない,六義園の中はカラスのねぐらで餌になってしまうかもしれないと勝手な思いでカメを家に連れて帰ることにしました.

会社に連れて行って空き箱の中に入れて置き,お昼には卵焼きとご飯を入れてあげましたが見向きもしません.
午後になると全然動かなくなってしまい随分心配しましたが,コーヒーカップの中に入れて水をかけてあげると途端に元気になりホッとしました.
その日は職場で新人の歓迎会と部長の送別会がありましたがカメが最優先なのでまっすぐ家に帰ることにしました.

地下鉄→JR→また地下鉄→私鉄の特急→田舎の支線と2時間の長旅を乗り切って,駅からは自転車のハンドルにぶら下げられグルグル揺すられてやっと到着しました.
昔子供がカブトムシを飼っていた水槽を洗って水を入れて石のベッドを作って中に入れてあげるとコーヒーカップの中に敷いていたティッシュを体中に貼り付けたまま元気よく泳ぎだしました.

我が家には子供が小学校の帰りに拾ってきたカメが一匹いて餌を見せると寄ってくるほど私になついています.時々人生の無常を黙って聞いてくれるいい話し相手です.
そんな我が家に今日から東京生まれの江戸っ子ガメが仲間入りです.
早く江戸っ子ガメも環境になれて2匹で重なって日向ぼっこでもするようになるのが楽しみです.